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2008年9月1日月曜日

零れた頬の光

こんばんは



最愛の人



今日も貴方の傍に私はいます





彼女は


最近所々日常の記憶が飛んでしまう

こんな馬鹿なことが現実で本当に起こるのか

それは映画の中の話だけだと思っていた





私はショックだった


彼女は私と行動をしたことを全く覚えていない



何度もメールや電話を俺にしてきた彼女
あきらかに助けを求めていた

それは彼女が予感していた記憶消失の危機を
必死に私に伝えたかったからなのかもしれない


私は今彼女の寝ている傍でこの日記を書いている





彼女は


彼女は・・・





横たわる彼女の左腕は傷だらけだった

彼女自身でのみ認識可能な客観的外傷

彼女の記憶が飛んだ中でも認識できる
唯一の客観的事実


そして安静にしている今

彼女は意識が朦朧としながらも
ベッドの上で上半身を起こし
しかし目は閉じたまま朧気に食事を欲する言葉を呟いた
ただ白米が食べたいのだという

その要望に応え
ピンクのマグカップに白米を入れ
スプーンとともにそっと渡してあげた

しかし箸が使いたかったようだ
箸を替わりに渡した


彼女は目を閉じながらも
ふらふらとおぼつかない利き手を使い

ボロボロと飯粒をベッドの上に落としながら口へ運ぶ
自分で食べたいのだと言う


全てを食べ終わらないうちに倒れこみ
落ちていた白米が彼女の左耳についてしまう

固まらないうちにそれをとってあげる


彼女は苦悩を顔に出すまいと隠し、それでも私を心配させまいと
精一杯苦しみに耐えて、その疲労で目を閉じたまま

横たわりながら飯粒を噛んで静かに寝入った

その顔は安らぎとはまた異なった
理不尽な不幸に疲れ切った静かで無垢な顔だった

静寂の闇が彼女を包んでいる



その姿を見て







私は泣いた



涙がとまらなかった


彼女が寝ている傍で何度も謝った

「ごめん…何も出来なくて…(涙)」


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